元々ルイアイは小説で書いていたものでした。
一話だけ完成していたので、せっかくなので載せようかと。
二話以降の小説版はありません。一話だけです。ご了承ください。
こちらの方が真文の心情をガッツリ書いているので、マンガ版一話の補足とでも思っていただければ。
それではどうぞ。
一話だけ完成していたので、せっかくなので載せようかと。
二話以降の小説版はありません。一話だけです。ご了承ください。
こちらの方が真文の心情をガッツリ書いているので、マンガ版一話の補足とでも思っていただければ。
それではどうぞ。
ずっと一緒にいられるのが当たり前なんだと思ってた。
一つの歳の差がこんなに恨めしくなるなんて思わなかった。
いつも背中を追いかけていた。
大好きで大好きで、憧れのあいつは――
「こうちゃん!」
「マサ、」
「だいすき!」
*
ピピピピ…と、セットしておいたアラームが鳴った。
手探りでスマホを探し、止めた。
「ふあ……」
懐かしい夢を見た。小学生に上がるか上がらないかの、そんな時期の夢だった。
俺――一橋真文(いちはしまさふみ)は、高校生になって約一ヶ月が過ぎた。
中高一貫だが高等部からも入れる学校で、全寮制の男子校に通っている。全寮制とは言ったものの、中等部に寮はなく、高等部からの制度。
寮生活も一ヶ月経てばだいたいのことは慣れてくる。
支度をしていると、ルームメイトの六野(むつの)がもぞもぞとベッドから這うように出てきた。
「おはよ」
「おはよーいちはし……眠いいい」
ドサッと音を立てて派手に床に落ちた六野。いつも通りの光景だ。
こうして床に落ちることで体に衝撃を与え、起きるという方法を聞いたときはマゾかと思ったが、朝が弱い六野なりの答えらしいのでそういう趣味ではないそうだ。
「おら、早く着替えねえと朝飯食いっぱぐれるぞ」
「まだちょっと時間あるじゃん……もうちょい…」
「起きろ」
これもいつもの光景。衝撃を与えても起きれない奴に、冷蔵庫でキンキンに冷やしたミネラルウォーターのペットボトルをパジャマの中に滑り込ませる。「うひゃう!」と六野は奇声を上げ、飛び起きた。よし、これで完全に起きた。
「早くしねーと置いてくぞー」
「待って一橋! すぐ着替えるから!!」
部屋にキッチンはあるので自炊は出来るが、基本はいつも3食学食で食べに行くのが日常になっていた。
六野とはお互い高等部からの入学ということと、同じクラスだということですぐに打ち解けられた。
――どうしてそんな中高一貫の学校を、高等部から入ったのは訳がある。
俺は幼なじみを追いかけて、ここに入った。憧れの、大好きな兄貴分は何故か高校へ進学するのに、この学校を選んだ。
てっきり地元の高校へ進むもんだと思っていたから、それを知って俺は猛勉強をした。
お金があれば入れるようなクラスも存在してるけど、一応進学をメインとした学校で、やっぱりやるからには上を目指したいということで頑張った結果、二番目に成績のいいクラスに入れた。てっぺんのSクラスはムリだったけど、素直に嬉しかった。
「いちはしー準備できた! 行こ!」
「おう」
全寮制ということでか、我が校の学食は広い。本当に広い。
私立すげえ、なんて公立で育ってきた俺は最初そんなことを思ってたけど、気付けばこの規模に慣れてるんだから人間って怖い。
そして、この時間に行けばまず間違いなく――…
「こうちゃ…、二藤先輩!」
「おう、マサじゃねーか」
「おはようございます!」
「ん、おはよう」
憧れの、大好きな兄貴分であるこうちゃん――二藤光平(にとうこうへい)がいるから、俺は朝の学食の時間にはどうしてもうるさくなってしまう。
小学生までは“こうちゃん”と呼んでいたけど、中学生になり、部活の先輩後輩になってからは敬語を使い、“二藤先輩”と呼ぶようになった。でもそれは学校内だけで、向こうも俺に先輩とか呼ばれるとむず痒いだとかで、プライベートでは今まで通りでいいと言ってくれている。
……こんな風に上下関係を気にしなくちゃいけないくなってから、もっとこうちゃんが遠くなってしまったような気がしていた。
「俺も! 俺もいますよ! おはようございます!」
「相変わらず六野はテンションたけーな」
はは、と笑いながらこうちゃんは言う。笑顔が眩しい!
ていうか六野はこれで朝が弱いなんて言うからたまに嘘なんじゃねーのかと思うことがあるが、外に出る時は頑張っているらしい。現に、休みの朝はやばかった。正直怖かった。
「光平、あそこ空いてたから取ってきた…って、マサくんと六野くん。おはよう」
「……おはようございます」
「おはようございます! 五十嵐センパイ!」
少し遠くからやって来たのはこうちゃんのルームメイトである先輩――五十嵐優也(いがらしゆうや)。
その名の通り優しくて、いつもほわほわしている先輩だけど、文武両道を極めている人の一人であり、実はかなりのしっかり者。そして生徒会役員も務めており、次期生徒会長とも噂されている。
いい人だ、いい先輩だとはわかっているものの、いつもこうちゃんの隣にいる五十嵐先輩にあまりいい感情は持てていない。
どうしてそんな風に思ってしまうのか。本当は嫌なのに。でもモヤモヤとした気持ちは抑えられず、それを表情に出さないようにするので今は精一杯だった。
「どうせなら一緒に食べませんか!」という六野の提案に、年上2人は快く乗ってくれた。
まあだいだいいつもこんな感じで4人で食べることになるんだけど。
それを見越してなのか、五十嵐先輩やこうちゃんが選ぶテーブルはいつしか4人掛けのものになっていった。そこに俺たちもお邪魔するのが、日常だった。
*
「一橋真文くん、だよね?」
朝食を食べ終わり、こうちゃん達と別れて一旦それぞれの部屋に戻ろうとした時、ふいに名前を呼ばれ、振り向いた。
そこには見るからに顔の良い、イケメンと称されるであろう男が立っていた。しかし身なりは不良そのもので、脱色したと即思わせる金髪に、何個も両耳に付けられたピアス、だらしなく着こなされた制服姿だった。
イケメンは何してもイケメンってか。なんて内心毒づいてみる。……つーか風紀委員的にこれは見逃せない恰好だな。
足元を見ると上履きの色が同じだったので、同学年ってことは確かだ。
「そうだけど……誰?」
「あれ? 俺こんなナリしてるから風紀委員には知られてると思ったんだけど、知らないんだ」
「は?」
確かに風紀委員内ではあまりにも素行が悪い生徒はブラックリストに入れられていて、俺はその生徒たちの顔と名前は認識している。でもこいつは記憶にはなかった。
「んー、ふたりっきりで話したいことがあるから、そっちのキミは外してくれる?」
金髪の男はチラリと六野の方を見ると、それに気付いた六野は露骨に顔を顰めた。
「一橋、あいつ……」
そう言葉を濁しながら、俺の腕を掴みぐいぐいと金髪とは反対方向に引っ張る六野の様子からして、この男があまり良く思われていないことは明らかで、六野は奴を知っているということだ。
こいつがもし厄介者であるなら、風紀委員として知らないのは恥ずべきことなんじゃないか、と反省していると、六野は休みの日の寝起きの時より目付きを鋭くさせ、目の前にいる金髪を睨んでいた。
「お前、F組の三上だろ。一橋に何の用だよ」
「そっちのキミは外してくれる?って言ったじゃん」
“F組”、と聞いたときになるほどと納得した。F組はお金さえあれば入れるクラスで、所謂不良――しかし家は金持ちという――が多いクラスだった。どうして進学校と謳っているこの学校にそんなクラスがあるのか甚だ疑問だが、あるものはしょうがない。しかしそれは間違いなく学校や生徒の問題の種になっていると言われているし、俺自身思う時がある。
そして、“三上”。どこかで聞いたことのある名前だな、なんて思っていると、六野は今にも掴みかかりそうな勢いだし、金髪ももちろんメンチ切ってるしで、さすがにこんな人目がたくさんあるところで騒ぎを起こすのはマズいと判断した俺は、まず六野を宥めた。
「六野、大丈夫だから」
やんわりと六野の腕を離すと、睨んでいた表情とは一変して俺に不安そうな、今にも泣きそうな目を向けてきた。六野には悪いが、ちょっと無視させてもらう。
「アンタ、三上だっけ?」
「うん」
「とりあえず話聞くから、場所移そう」
「さっすが~、話がわかるね。じゃあ1年の空き教室行こ」
すぐ戻るから、と意味を込めて六野の方を見る。六野はしぶしぶ頷き、部屋へ戻っていった。
わざわざふたりきりになるように仕組むからには、余程人に聞かれたくない内容なのだろう。そして三上という名前はどこで聞いたことがあったのか。委員会ではなかったはずだ。そこで名前が挙がっていれば、さすがに覚えてはいる。なんてことを悶々と考えているうちに、空き教室に着いた。
「時間も時間だから手短に話せよ」
「ん。」
何も使われていない教室なだけあって、机や椅子が乱雑に置かれている。その中の一番手近な机に、三上は腰を下ろした。
「俺のこと知らないみたいだったから、まずは自己紹介ね。俺は三上春(みかみしゅん)。あいつが言ってた通りF組。なんで一橋くんのこと知ってるかっていうと、ゆーやくんと幼馴染みなんだよね、俺」
「ゆーやくん……? ああ、五十嵐先輩か」
「そうそう。ゆーやくん追ってこの学校入ったんだけど、やっぱり付け焼刃の勉強じゃだめだね~。S組なんてムリムリ」
「……手短に話せって言わなかったっけ?」
流石に遅刻はしたくないので、本当ならこんなところで油は売っていたくない。
ごめんね、と三上は謝るがどうも誠意は感じられない。すると三上は口角をゆっくりと上げ、綺麗な笑みを浮かべて言った。
「あのふたりの仲、壊さない?」
「……は?」
「俺、ゆーやくんのこと好きなんだよね。だから協力してほしいの」
「なに、それ」
「あれ、もしかして自覚してない? 適任だと思ったから提案したのに」
「自覚って……何のことだよ」
「キミ、二藤光平のこと好きでしょ?」
そう言われた瞬間、カッと目の前が真っ赤になった。自然と表情が険しいものになる。
それに気付いた三上は、さっきまでの綺麗な笑みを歪ませ、いかにも悲しそうなカオを浮かべた。
「やめてよ。売られたケンカは買うけどさ、俺、キミとはケンカしたくないし。ていうかキミが負けるし」
「うるせえよ! こうちゃんにはそんな……、そんな風に思ってねえ!」
「えー、ほんとかなぁ? あーんな熱視線、丸わかりなんだけど。
でも、ま、キミの周りには鈍感くんしかいないようだし、バレてないと思うけどね」
「勝手に話進めてんじゃねえよ」
この時点でもう、すでに俺の三上への印象は最悪だった。
こうちゃんにそんな感情はない。憧れの、兄貴分として慕っているだけだ。そういう意味で好きだなんてことになったら、俺は、どうすればいい。
「……いいの? 誰かに取られても。隣にいるのがキミじゃなくてもいいの?」
「うるさい…」
「俺は嫌だよ。ゆーやくんの隣にアイツがいるの。ほら利害一致。メリットしかない」
「……」
無言で三上を睨み付けるも、奴には無意味だった。
それよりも、可笑しくてたまらない、といったカオで俺を見ていた。
「……バラしてあげようか? アイツに」
「!」
「それが嫌なら協力してね。キミにとってもいい案だと思うけどなあ」
そういって三上はひょい、と机から降りる。
綺麗な笑みを貼り付かせ、俺の方をぽんと叩いた。
「まあ、そんなこんなでよろしくね。一橋真文くん」
耳元で囁くように言われ、ぞっとした。寒気がした。そして、泣きたくなった。
Back